映画『七小福』感想・見どころ・トリビア・キャスト紹介!ー香港映画BIG3/ジャッキー・チェン、サモ・ハン、ユン・ピョウの壮絶少年時代とは?!ー

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映画レビュー

  1. はじめに
  2. 香港映画『七小福』あらすじ
  3. 香港映画『七小福』キャスト・登場人物の特徴
    1. ユー・チェンイン先生…サモ・ハン・キンポー
    2. ファー叔父…ラム・チェンイン
    3. 女性団長マスター・チェン…チェン・ペイペイ
    4. アロン(少年時代)…ヒャオ・ミンクァイ/チャン・ウェイラン
    5. サモ(少年時代)…ヤン・シンヒェン/チャン・チンジェン
    6. ピョウ(少年時代)…クー・フィ/ハン・チェンウェイ
  4. 香港映画『七小福』見どころ・感想
    1. ジャッキー、サモ・ハン、ユン・ピョウの壮絶少年時代…そこにあった深い師弟愛。
    2. 男子っていいな…。見返りを求めない、ピュアな友情に元気が出る。
    3. 名脇役ラム・チェンインの見せ場が凄すぎる!男の悲哀に涙腺崩壊
    4. サモ・ハン・キンポーが香港アカデミー賞(香港電影金奨)で主演男優賞を受賞
    5. メイベル・チャン&アレックス・ロウ、デヴィッド・チャンが創り出すノスタルジックな世界観
    6. 心とリンクする「水」の演出が秀逸すぎる
  5. 香港映画『七小福』トリビア集
    1. ジャッキーにお風呂を届けた母…は実話。
    2. 実は映画化に消極的だったサモ・ハン・キンポー
    3. 本当にチビだったイケメン男子、ユン・ピョウ
    4. サモが中国京劇学校を去った<本当の理由>が可愛い
    5. 中国京劇学校の廃校後、ユー先生を追ってアメリカで活躍したユン・ピョウ。
    6. ケンカが絶えなかったジャッキー&サモ、今ではお互いリスペクト。
  6. 最後に・・・。

はじめに


今回レビューする映画は、1988年 香港ゴールデン・ハーベスト社製作の文芸映画『七小福』です。

香港映画BIG3ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウの子供時代を描いた作品。
私はジャッキー映画で育った世代なので(ユン・ピョウのファンでしたww)、彼らが親元を離れ京劇子役集団「七小福」のメンバーとしてバンバンしごかれて活躍してた…という歴史だけは知っていた。
それが映画化されたことも。。
でも、何となく観なかった。
時を経て…たまたま観た映画『イップ・マン』に出演するサモ・ハンを見て..思わず大粒の涙を流す。
大ボスの貫録&包み込む温かさがバージョン・アップしてる。
優しさ滲む眼差し。そこからフラッシュバックする名作の数々…。

私は今でも「一番好きな映画は?」と聞かれると「プロジェクトA!」と答える。
お洒落なフランス映画、スタイリッシュなイギリス映画、ダイナミックなアメリカ映画などを挙げてカッコつけたい時期もあったけど、私の映画人生を築き上げる礎となったのは香港映画。
ひいてはジャッキー、サモ・ハン、ユン・ピョウ三つ巴の娯楽作品だった!
(時が来たら『プロジェクトA』のレビューに着手するつもりです。)

前置きが長くなったけど『七小福』。
子供時代、実の師匠だった于占元ユー・チェンインをサモ・ハンが演じてる。
湿り気たっぷり、ホロ苦くてどこか懐かしい青春・文芸ドラマです。
では、紹介していきましょう。

香港映画『七小福』あらすじ


時は1962年、香港。
「親代わりとして無償で世話する代わり、興行収入の100%は当院が頂きますよ。」な京劇学校に、1人の少年が連れられてくる。
彼の名前はアロン(後のジャッキー・チェン)。
母の手に引かれてやって来た。
ヤンチャ坊主だけど母を労わる優しさがあり、「ここで10年頑張るぞ!」と元気に振る舞い同席した母を安心させる。

入門1日目から怒涛のしごきが始まるが、同年代の訓練生たちはいい奴ばかりだった。
兄貴分のサモ、ムードメーカーな弟分ピョウ等..気の置けない仲間たちと切磋琢磨し苦楽を共にする。
手加減しないスパルタ師匠、偏見だらけの世間様…それでも泣き虫はカッコ悪い!
師匠の目を盗んでは一張羅(時代遅れな一張羅)で町へ出かけ、オシャレや恋を謳歌し、青春の醍醐味をたっぷり満喫した。
お金もない、流行も知らない彼らだけど、楽しむ知恵・・・・・だけは一人前だった。

やがてアロン、サモ、ピョウは「七小福」の選抜メンバーとなり、あちこちで技を披露し意気揚々となる。
しかし・・・。
流行とは冷酷なもので、「京劇下火」の波がジワリ..ジワリと押し寄せてくる。
これまで皆を楽しませて来た京劇は、「大衆文化」から「古風な伝統芸能」へと追いやられていく。
それでも関係ない。
京劇愛を貫き、ひたむきに演じ続ける彼らだったが…。


香港映画『七小福』キャスト・登場人物の特徴


ユー・チェンイン先生…サモ・ハン・キンポー


サモ・ハン・キンポー(洪金寶)
ユー・チェンイン先生(于占元)は、ジャッキー達が京劇を学んだ中国京劇学校の院長。
先述のように「親代わりとして無償で世話する代わり、興行収入は100%当院が頂きますよ。」というスタンスで子供たちを預かり、厳しくつらい修行に耐えさせ一流芸を叩き込む。
とはいえ…京劇の興行収入なんてたかが知れていて、自らもお腹を空かせ、壊れかけのベッドで夜を過ごしている。

そんなユー先生を演じてるのはサモ・ハン・キンポー(洪金寶)。
自分の師匠を演じ、子役が演じる自分を叱咤する。
どんな気持ちで演じたんだろう。
当時の彼は33歳だったんけど…
流石さすがサモ・ハン・キンポー!!」…と、叫びたくなる貫録。
いぶし銀と言っても過剰ではない味わい深さです。
哀愁と懐深さ、彼ならではの可愛らしさが作品を味わい深いものにしてる。
抒情的なホロにがさ&人間臭さ満開の名演技…。もう「参りました。」としか言いようがないです。


ファー叔父…ラム・チェンイン


ラム・チェンイン(林正英)
ファー叔父はユー・チェンイン先生の弟で、共に京劇を学び、スタントマンとして生き、切磋琢磨してきた戦友でもある。
学校を設立し「先生になること」を決意したユーとは違い、今でもスタントマン生活をしてる。
40年頑張ってもスターにはなれなかった。
もういい年だし、ヘマしっぱなしだし、今後スターになれる見込みも無い…。
ユーと酒を酌み交わす夜にだけ、ちょっぴり弱音を吐く。
それでも武術家としての人生にプライドを持ち、頑張るアロンたちを深い愛情で包み込んでいます。

そんなファー叔父を演じているのはラム・チェンイン(林正英)。
「この人、何か懐かしい…。見たことある顔だ。。」
と思ったら、やっぱり往年のジャッキー映画の常連俳優さんでした。
『五福星』から続く「福星シリーズ」や『燃えよデブゴン』シリーズ、『ポリスストーリー』、古くはブルース・リーの映画までごっそり網羅してる実力者。
『霊幻道士』のチェン先生役が有名なんですね。(ホラー観れないタイプなので知らなかった。。)
幼い頃はサモ・ハンたちとは違う学院で京劇を教え込まれてたそう。
京劇・スタントマンの経験者であり、サモ・ハンの盟友でもある。
実績あってこその説得力&儚げな哀愁で作品を魅了しています。



女性団長マスター・チェン…チェン・ペイペイ


チェン・ペイペイ(鄭佩佩)
マスター・チェンは、北京戯学院にコラボ企画を要請した女性歌劇団“広東フェニックス”の女性団長。
団長…という肩書イメージと違って、奥ゆかしくエレガントな美魔女です。
優しくて賢くて、それでいて技のキレは抜群!
ユー先生が惚れないわけないですね。。
チェン&ユー、熟年男女のピュアな両想いにキュンとくる♡

そんなチェンを演じてるのはチェン・ペイペイ(鄭佩佩)。
大物登場です!
60年代ショー・ブラザースの看板女優として「武侠映画の女王」の名を欲しいままにしてきたけど、元々は文芸映画出身の演技派女優。
ダンスが得意だそうで、ミュージカルもアクションも演じ切れる貴重な存在だった。
本作の劇中でも、ちょっぴりだけ妖艶な舞を見せてくれてる。
大人な女の艶やかさ、しっとり熟した佇まいが素敵なんです♡


アロン(少年時代)…ヒャオ・ミンクァイ/チャン・ウェイラン


ミンクァイ君(少年期)
アロンはジャッキー・チェン(成龍)の子供時代。
共働きで忙しいのか、何か事情があるのか..無償の京劇学校に我が子を託した母。
優しいアロンは空気を読み「望むところだ!」と言わんばかりの笑顔で現実を受け入れる。
持ち前の負けん気&ポジティブ思考で苦行を制し、「七小福」選抜メンバーのトップへと成りあがっていく。

そんなジャッキーの子供時代を演じているのはヒャオ・ミンクァイとチャン・ウェイラン。
どちらもジャッキーの面影を感じさせるそっくり君なんだけど、それぞれに味わい深いです。
チャン・ウェイラン(青年期)
イタズラな笑みが可愛らしいミンクァイ君(少年期)と、はにかみ&寂し気な表情が印象的なチャン・ウェイラン(青年期)。
ただ突っ走ってればよかった少年時代から恋や人生に悩みだす葛藤期へ..。
時代と共に移り変わっていく風情が愛おしいのです。



サモ(少年時代)…ヤン・シンヒェン/チャン・チンジェン


ヤン・シンヒェン(少年期)
サモは文字通り、サモ・ハン・キンポー(洪金寶)の子供時代。
訓練生が誇る兄貴分で統率力も抜群。心優しきボスキャラでございます。
基本的には兄弟弟子たちのヤンチャ・無作法の戒め役ですが、時には全員を引率してお祭り騒ぎを興じたりする(笑)
アロン(ジャッキー)の恋を盛り立てたのも彼でした。

そんなサモを演じてるのはヤン・シンヒェンとチャン・チンジェン。
とはいえ、青年期を演じたチャン・チンジェンは名前を変えることを条件に出演したので本名じゃないですね。(たぶん。間違ってたらゴメン。)

チャン・チンジェン(青年期)
彼は当時27歳で、政府のパイロットをしていたそうです。
少年期のシンヒェン君も子供ながら精悍で可愛かったけど、青年期のチャン・チンジェンの方がよりサモに似てました。
独特のニヤリ顔、絶品です。

ピョウ(少年時代)…クー・フィ/ハン・チェンウェイ


クー・フィくん(少年期)
ピョウもそのまま、ユン・ピョウ(元彪)の子供時代。
チビで無邪気で天真爛漫、愛嬌たっぷりのムードメーカーでありみんなの弟。
人懐っこさ・好奇心の強さなら誰にも負けない!(…と顔に書いてあるww)
チビっこいけど努力家で、素直に技を習得して「七小福」入りを果たします。

そんなピョウを演じてるのはクー・フィとハン・チェンウェイ。
ピョウ役に関しては、青年期のハン・チェンウェイよりも少年期のクー・フィ君の方が存在感強め。

ハン・チェンウェイ(青年期)
(↑青年期のピョウはその場にいるだけで、直接的エピソードが少なめなのです。)

で、少年期のクー・フィ君…マジ可愛すぎます♡
ほっぺたかじりたくなるレベル(笑)
でも正直、ユン・ピョウにこのイメージって無かった。
写真集搔き集めるくらいの大ファンだったけど、笑顔もキュートだったけど、もっといい意味でスマートというか、、ジャッキーたちよりも奥ゆかしくてシャイなイメージだったから。
・・・とはいえ、逆に好感度が増しましたねww。



香港映画『七小福』見どころ・感想


ジャッキー、サモ・ハン、ユン・ピョウの壮絶少年時代…そこにあった深い師弟愛。


この作品を見ていると、後に世界的なスターとなるジャッキー、サモ・ハン、ユン・ピョウの壮絶な少年時代を感じ取ることが出来ます。
(ジャッキー曰く「こんなもんじゃなかった!」らしいですがww)

泣きつくことも、甘えることも許されない寮生活で必死に耐えてる子供たち。
興行収入が少なければご飯もままならないし、疲れた体を癒すお風呂もここには無い。
ビシャビシャのタオルを両足で踏み、冷たいコンクリートの床掃除をする。
全身傷だらけでも容赦ない猛特訓。
それでも耐えるしかない。
なぜなら…ユー先生自身も貧困生活に耐えてるから。

厳しい顔を見せてる裏では、蔑み侮辱する世間様から生徒たちを守ってる。
心無い言葉を浴びせる大人に向かって「生徒たちは皆いい子だぞ!私がみんなの父親であり、母親だ!」と喰ってかかる。
「馬鹿にされても胸を張って生きろ!」
そう言って労わってくれる師匠だから。
過酷な毎日だけど、そこには深い深い師弟愛があったのです。


男子っていいな…。見返りを求めない、ピュアな友情に元気が出る。


そんな寮生活だから、子供たちは助け合って暮らすしかない。
厳しく寂しいだけの毎日では生きていけない。
頼れるサモ兄貴、喧嘩っ早くも楽しいアロン兄ちゃん、兄貴らを純粋に慕うチビっ子たち…。
みんながいるから頑張れる。笑って暮らせてる。

お仕置き覚悟で作った隣人の干し芋・・・・・・製スープ、嘘ついて実現させた無銭バス観光、こそこそ出掛けたお祭り屋台・・・。
皆に怒られたし、鼻持ちならない<同年代お坊ちゃまグループ>と大乱闘になったし、先生から大目玉喰らったけど楽しかった。
イタズラに目を輝かせる少年たちが愛おしい。
「男子っていいな…。」って思っちゃう。
見返りを求めない、ピュアな友情劇に元気が出るのです。



名脇役ラム・チェンインの見せ場が凄すぎる!男の悲哀に涙腺崩壊


辛くも楽しい毎日が過ぎていくけれど、彼らだっていつまでも子供じゃいられない。
「卒業時、恩返しすること。」
この約束を果たす時期が日に日に近づいてくる。
先生も本気で提示したわけじゃないだろうけど、各々真剣に考えるべき時が来てる。
人生の答え合わせをする大切な分岐点。

そこでユー先生は、弟ファーがスタント出演する撮影現場に彼らを連れていく。
しかし、初めての撮影現場にウキウキな彼らの前で壮絶な惨劇が起こってしまう。
激しいNGを出してしまい、血だらけのファーが正気を失う。
凍り付く撮影スタッフ、出演者、ユー先生、そして夢多き生徒たち…。
スポットの当たらない人生。誰からも称賛されない無名のスタントマン人生。
ボロボロの体を引きずり、狂ったように舞い始めるファー。
セットは壊れ、小道具の雪が大量に舞う。
誰も止められない。
その光景を見ていたアロンたちの頬に涙が伝う。

狂い舞うラム・チェンインの演技、、涙なしに見続けるなんて不可能でした。
クローズアップした時に見える悲哀の瞳、鳴りやまぬリスペクト拍手をグッと噛みしめる表情。
名バイプレーヤーとしてのプライドがガンガン伝わる名演技でした。
狂い舞う彼を追い、即席のコンビ芸に興じるサモ・ハンの演技も素晴らしかった。
個人的に思うのですが、ファー叔父って実在の人物じゃなく…カンフー映画全盛期にスターになれないまま埋もれていった「名もなきファイター達」へ捧ぐオマージュ的キャラクターだったんじゃないかな。。
(思い込みだったらゴメンなさい。)



サモ・ハン・キンポーが香港アカデミー賞(香港電影金奨)で主演男優賞を受賞


この映画で師匠ユーを演じたサモ・ハン・キンポーは、香港版アカデミー賞と呼ばれる「香港電影金奨」で主演男優賞を受賞しました。
1981年に監督・主演を務めた『ピックポケット!』に続く2度目の受賞。
ただし、お得意のコメディ・アクション主軸の『ピックポケット!』とは違い、本作『七小福』は文芸映画。
「サモ・ハンはアクションだけの俳優じゃない、演技派としても高く評価されるべき!」
…そう思わせてくれるに相応しい名演技でした。
サモ・ハン・キンポーは、この作品を機に役者としての評価がグッと高まりました。



メイベル・チャン&アレックス・ロウ、デヴィッド・チャンが創り出すノスタルジックな世界観


映画『七小福』を手掛けたのは、メイベル・チャン&アレックス・ロウ脚本・監督コンビです。
艶めかしい人間ドラマの名手で、「湿り気なら任せとけ!」がここでも爆発。
そして撮影担当は、潤んだ映像世界を紡ぎ出す名手デヴィッド・チャン。

メイベル・チャン&アレックス・ロウといえば、チョウ・ユンファ&チェリー・チェン主演の『誰かがあなたを愛してる』が有名ですね。
この作品でも撮影担当はデヴィッド・チャンでした。
過剰に引っ掻き回さず、少ない登場人物にじっくりと焦点を当てた人間ドラマ。
だからこそのリアリティー。
印象に残るシチュエーション背景も<2人が暮らす小さなアパートと海辺>くらいしか無いんだけど、そこがいいんです。
小さな部屋のアイテム一つ一つに愛着が湧き、自分もそこに居るかのような錯覚を覚える。
メイベル・チャン&アレックス・ロウの繊細なストーリー演出があり、そこにデヴィッド・チャンの湿り気映像美が融合する。
この秀逸ハーモニーが本作『七小福』でも味わえる。
ノスタルジックかつ濃厚な世界観がタマらないのです。

因みにデヴィッド・チャンは私の中での名作、レオン・カーファイ主演の香港映画『さらば英雄/愛と銃撃の彼方に』(1991年)でも撮影担当をしています。
こちらも湿り気バツグン。
大河的演出がドラマチックな濃厚メロドラマとなっております!
映像の世界観も然りで、しっとりした抒情的質感にシビれます。
素晴らしい作品なので、興味が湧いたら是非是非見てみてください。
(こちらも、時が来たらレビュー書きます。)




心とリンクする「水」の演出が秀逸すぎる



そして、本作の<湿り気演出>をより引き立てているのが「水」の演出です。
過去にレビューした『ウエスタン』にせよ『誰もがそれを知っている』にせよ、素晴らしい映画って「水」の演出が秀逸だったりする。
登場人物それぞれの心情を「水」に込め、光や動き、音や質感だけで揺すぶりかけてくる。
水で語る瞬間がある映画って素晴らしい。


京劇学校の外で冷たいコンクリートを濡らす水たまり、アロン&母の心情を映し出す格子の雨雫、お風呂替わりに…と子供たちがぶっ掛けられるホースの水、同年代お坊ちゃまグループが浴びせた悪意あるイタズラ水、ピョウが嬉しそうに見つめてた小さな金魚鉢、ユー先生&ファー叔父の語らいに優しく寄り添うお酒、アロンの母がタライと一緒に運んできた暖かいお湯。。
全ての「水」に対象人物の心が映し出されてる。
思い返せば沁みてくる…そんな素晴らしい映像トリックです。




香港映画『七小福』トリビア集


ジャッキーにお風呂を届けた母…は実話。


劇中、アロンの母が温かいお湯とタライを持って会いに来たシーンがありますが…これは事実に基づいた演出だそうです。
全身傷だらけでお風呂も無く、冷たいホースの水で体を洗う生徒たち。
ジャッキーの母がタライにお湯をくべ、体を労わったエピソードは本当にあったようです。
「いい子にしてた?」泣きながらお湯をかける母を、「泣かないでよ。痛くなんかないんだから。」と諭すシーンが健気すぎて泣けました。

因みに・・・後々に発覚したのですが、ジャッキーの両親には<隠し続けていた真実>がありました。
ジャッキー直々の依頼でメイベル・チャン&アレックス・ロウが製作した2003年のドキュメンタリー映画『失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン』で明らかにしています。
激動の時代、ジャッキーの両親にどんなヒストリーがあったのかは…是非『トレース・オブ・ア・ドラゴン』を観て悟ってください。。
母の病死直前に父から語られるまで(2002年死去)ジャッキー自身も知らなかったそうで、当然ながらショックが大きかったみたいです。



実は映画化に消極的だったサモ・ハン・キンポー


本作での名演技が高く評価され、香港アカデミー賞主演男優賞を受賞したサモ・ハン・キンポー。
しかし当初、自分たちの子供時代ヒストリーを映画化することには消極的だったそう。
面白くはならないだろうと。
でも…脚本・監督はメイベル・チャン&アレックス・ロウです。
じっくりと熟孝した末、「客観的なものさしで描かれるのは興味深いし、意外と良い作品になるんじゃないか?」という閃きが生まれたようです。
そして主演を務めた。
あの頃の自分、そして戦友たちへのリスペクト。
大大哥タイタイコー(大大兄貴)サモだからこその「大きな愛」で師匠ユー・チェンイン先生を演じ切りました。

そのユー・チェンイン先生、実は本作公開の9年後…1997年に他界しました。
まだご存命で元気なうちに観ることが出来たんですね。。



本当にチビだったイケメン男子、ユン・ピョウ


本作でユン・ピョウを演じたクー・フィくん、本当に可愛かった♡
人懐っこくて嬉しがりで、ピッチピチのおチビちゃん。
いつも兄貴たちにくっついてニコニコしてる。

で、実際のユン・ピョウって…本当にチビだったらしいww。
最年少だからじゃなくて。
他の兄弟子達と一緒にエキストラ・スタントマンとして現場に行っても、監督やスタッフに「子どもは向こうへ行きなさい。」って言われたりしたそうです。(14歳当時)
だけどサモ・ハン曰く、一番女の子にモテたのはユン・ピョウ。
イケメンですからねww。
なのにユン・ピョウは堅実派なので、俳優は目指さず武術指導をメインに裏方で・・・働きたいと思っていました。
そこでサモ・ハンは説得した。
「お前は顔がいいから武術指導より役者に向いてるよ。」
その時1979年。
ユン・ピョウは、サモが監督・助演を務めた『モンキー・フィスト 猿拳』で主演デビューすることになったのです。



サモが中国京劇学校を去った<本当の理由>が可愛い


みんなの大大哥タイタイコー、頼れる兄貴サモ・ハン・キンポー。
劇中ではアロンの罪を被るカタチで京劇学校を追われてましたが。。
本当言うと、去ったのは違う理由らしい。
何が原因かというと…

太り過ぎ!!

信じられないけど、訓練生時代のサモって写真で見るかぎり…とってもスリムな体型でした。
でも京劇が下火になり始めてた頃のある日、サモは練習中に足を負傷してしまう。
入院しなきゃいけないレベルの事故。
この入院が運命の分かれ道へと繋がっていく。
ヤンチャ坊主にとっての入院は余程退屈だったのか、やることも無く暴飲暴食しまくっちゃうww。
よって太り過ぎ、「七小福」メンバーから外されてしまう。
しかしこのおデブで強いキャラは、厳しい映画界に於いて最大の武器となりました。
唯一無二のキャラクターですもんね。

それにしたって。
太り過ぎで退学なんて…可愛すぎる(笑)
「太り過ぎで退学」なんて、映画的には物語ブレブレになっちゃう。
だから変更せざるを得なかったのかもしれませんねww。




中国京劇学校の廃校後、ユー先生を追ってアメリカで活躍したユン・ピョウ。


劇中では「七小福」メンバー全員が旅立つユー先生を見送りましたが、実際にはそうじゃなかった。
先述のようにサモは退学してたし、ジャッキーもメンバー達もいなかった。
唯一残ってたのがみんなの弟ユン・ピョウ。
意を決し、ユー先生を追って遠くアメリカへと旅立ちます…。
新天地アメリカで立ち上げた劇団は盛況で、ユン・ピョウも大活躍!

ところが…!
劇団マネージャーの博打好きが全てを台無しにしてしまう。
興行で得た売上金を博打でスってしまい、劇団はまたもや解散を余儀なくされるのです。
悲しいけれど、先生と過ごすアメリカ生活はたった数年で終わってしまった。

因みに、劇中の設定ではアロンより先にユン・ピョウがいたけど
実際にはサモ→アロン→ピョウの順で入門してる。
幼きユン・ピョウはよく父親と一緒に京劇を見に来てて、ステージ上で活躍するサモ・ハンやジャッキーに憧れてたんです。
だから入門した。
自分の意思で中国京劇学校に入門したのです。



ケンカが絶えなかったジャッキー&サモ、今ではお互いリスペクト。



劇中サモとアロンの大喧嘩エピソードがありましたが、実際2人はケンカが絶えなかったそうです。
親分肌のサモと反骨精神強めのジャッキーは何かと衝突してた。
後にサモ・ハンは「(自分は)兄貴肌で面倒見が良かったけど、独裁的でわがままな部分もあった。」と謙虚に振り返ってます。
「ジャッキーは学校で特別扱いされてるな…。」と感じてたのも一因だったようですが。
(お風呂の件もありますしね。)

スターになってからも2人には色々あったそうだけど、名作と呼べる共演映画が沢山生まれたのも事実。
先に映画スターとして成功したサモ・ハンは、ジャッキーやユン・ピョウも映画界で活躍できるように色々と手助けしてました。
現在はお互いをリスペクトし、良い関係が築けてるみたいなので結果オーライですね。



最後に・・・。


今回は1988年の香港映画『七小福』について語らせて頂きました。
大好きなジャッキー、サモ・ハン、ユン・ピョウについて沢山語れて感無量~♡♡

香港BIG3に関してはレビューしたい作品がまだ山程あるけど、まずはここから始めるのがベストな気がしました。
知らなかった真実に触れることも出来た。
愛を持って深掘りするのって楽しい。
やめられません(笑)




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