映画『ウエスタン』キャスト&エピソード・見どころ・感想・トリビア!これぞセルジオ・レオーネ流!過激なるピュアに心震える!

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マカロニ・ウエスタン系

  1. 『ウエスタン』(- Once Upon a Time in The West -)ってどんな映画?
    1. マカロニ・ウエスタンとは? アメリカ西部劇との違いは?
    2. セルジオ・レオーネ監督&作曲家エンニオ・モリコーネの偉大なる遺産!
  2. 映画『ウエスタン』あらすじ
  3. 映画『ウエスタン』キャスト・登場人物の特徴
    1. ジル・マクベイン(演:クラウディア・カルディナーレ)
    2. ハーモニカ(演:チャールズ・ブロンソン)
    3. フランク(演:ヘンリー・フォンダ)
    4. シャイアン(演:ジェイソン・ロバーズ)
  4. 映画『ウエスタン』見どころ・感想
    1. 音でも魅了する!偶発的な音にもこだわりまくる!伝説の12分!
    2. “ヒロインの心境”が衣裳から駄々洩れ!レオーネ作品初の女性主人公に注目!
    3. 小気味いい”バディー劇”にスカッとする!粋な出会いにも痺れが!
    4. 目のクローズアップが強烈!これぞレオーネ映画!
    5. 謎を引っ張るフラッシュバックにゾクゾク鳥肌!
    6. ジルが入れたコーヒー、シャイアンのカタルシス。忘れられない味&想い。
  5. 映画『ウエスタン』エピソード&トリビア
    1. 絶対に見たかった!実現できなかったオープニングのサプライズとは?
    2. 顔にハチミツ?
    3. イーライ・ウォラックが繋いだ縁に感謝!
    4. クラウディア・カルディナーレの毅然にレオーネ監督もタジタジ!?
    5. その後大物になった2人が原案を依頼されていた?
  6. 最後に・・・。

『ウエスタン』(- Once Upon a Time in The West -)ってどんな映画?

映画『ウエスタン』(Once Upon a Time in The West)は1968年、イタリアの西部劇。
「ドル箱三部作」で有終の美を飾ったセルジオ・レオーネが、母国イタリアから飛び出してアメリカの製作陣とタッグを組んだ「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」の第一弾作品。
レオーネだからこそ成し得た”マカロニ・ウエスタンと古典アメリカ西部劇の融合“がここにあります。
神々しくも男臭い旋律、そして過激なるピュア・・・・・・・に心震える人間抒情詩です。

ギラギラした漢ロマン、強烈な人間描写を擁するレオーネ節はそのままに、迫りくる近代社会で生き場を無くすであろう”最後のガンマンたち“の生き様をリスペクト感たっぷりに描いています。

「ドル箱三部作」が評価されるまでアメリカでは無名だったイタリア人監督レオーネが、これまでずーっと夢見てきた俳優陣、憧れてきたロケーションを手に入れ、満を持して完成させた集大成であり、<セルジオ・レオーネ流ウエスタンの完成形>とも言える作品なのです。

マカロニ・ウエスタンとは? アメリカ西部劇との違いは?

簡単に言えば、マカロニ・ウエスタンとは1960年初頭~1970年初頭に人気を博したイタリア製・・・・・の西部劇です。
イタリアの映画製作者がスペインの荒野・・・・・・・で撮影した西部劇をマカロニ・ウエスタンと呼びます。
ジョン・フォード監督作品を筆頭に40~50年代に人気を博した”アメリカ西部劇”が正義に満ちていたのに対し、マカロニ・ウエスタンはノワール要素が強く、ニヒルにして粗暴!斬新にして暴力的!
過激なアウトロー達が”西部劇”の価値観を大きく変えたのです。
故に「アンチ・アメリカ西部劇」とも言われてました。
因みにイタリア・アメリカ・イギリスでは”スパゲッティ・ウエスタン”と呼ばれています。
“マカロニ・ウエスタン”と呼んでるのは日本・韓国だけで、名付け親は…私も大尊敬・・・する淀川長治氏なんだそうです。

そして、マカロニ・ウエスタンの巨匠として最も名高いのがセルジオ・レオーネ監督なのです。

セルジオ・レオーネ監督&作曲家エンニオ・モリコーネの偉大なる遺産!

マカロニ・ウエスタンには”男の色気”と”野生”を高盛りしてくれる激情サウンドが必須です。
恐怖を覚えるほどカッコ良くてヘヴィーなやつ。
でも、”美しい旋律”がなければアウトです!
美旋律・・・が主軸・・・の迫力が欲しい。
そして、その希望を満たしてくれる唯一無二の作曲家がエンニオ・モリコーネだったのでしょう。

セルジオ・レオーネとエンニオ・モリコーネのタッグは「ドル箱三部作」からずっと続いてました。
『荒野の用心棒』の口笛を使ったテーマ曲とか最高です!
重~い鐘の音と鞭の音、勇壮な男たちを連想させるフォーキーなコーラスと口笛の音感コントラストがタマらない。
何回でも聴けるやつです。

Ennioエンニオ Morriconeモリコーネ – Per un pugno di dollari(荒野の用心棒)


そして勿論、本作『ウエスタン』でも2人の最強タッグが大爆発しています。
登場人物それぞれのテーマ曲、迫力満点のガンファイト曲、フラッシュバックの哀愁曲などバラエティーに富んだラインナップが続き、聴くたびに心揺さぶられてしまいます。
これぞエンニオ・モリコーネ節!

ちなみに、本作では映画撮影の前・・・・・・にエンニオ・モリコーネが曲を完成させちゃってます。
彼が作曲したサウンドトラックからイメージを膨らませる・・・という革新的な方法で撮影したレオーネ監督。
一心同体の証ですね。
脚本からイメージされた先入観無き音世界…。
抒情的すぎるサウンドが胸を打ちます。
このサウンドトラックはセルジオ・レオーネ監督&作曲家エンニオ・モリコーネの偉大なる遺産であり、集大成に相応しいものだと思います。

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映画『ウエスタン』あらすじ

舞台は西部開拓時代、フロンティア・スピリッツで近代化されつつあるアメリカ西部の砂漠町。
オンボロの小さな駅で、ハーモニカを吹く謎の男が”3人の腕利きガンマン”を一網打尽にする。

同じ頃、ここで農場を買って静かに暮らす開拓移民、マクベイン一家が冷徹なガンマン一味に襲撃される。
また別の駅では、場違いな装いのモダン女性ジルが一人列車から降り立ち、新天地を仰いでる。

待ってても迎えが来ない事を悟ったジルは馬車を拾い、嫁ぎ先となるスイートウォーターへ向かう。
そしてその途中、休憩がてら立ち寄ったバーで”2人のガンマン”と鉢合わせする。
1人は一網打尽のハーモニカ男、もう一人はマクベイン一家襲撃の罪を擦り付けられた盗賊の長シャイアン。

その後ジルは夫の家に辿り着くが、夫と子供たちは亡き者にされていた。
ジルの嫁ぎ先は、襲撃されたばかりのマクベイン家だった…。

冷徹なガンマン一味を束ねてるのはフランク。
鉄道局の悪徳役人モートンと組んで、鉄道開発の邪魔となる者を問答無用・・・・で始末していた。
失うもの無きジルは、謎のハーモニカ男&盗賊シャイアンと組んで復讐を果たそうとするが・・・。

映画『ウエスタン』キャスト・登場人物の特徴

ジル・マクベイン(演:クラウディア・カルディナーレ)

ジルは大都会ニューオーリンズから遥々西部に嫁いできた元娼婦。
元娼婦とはいえども”母性愛“も人並み以上に強いので、娼婦と母親…両方の顔を伏せ持つ魅力人。
“腹をくくれば怖いもんなし”的な強靭さもあり、賢く世の中を渡っていける人。
悪人によって手籠めにされても「熱いお湯に入っておしまいよ。元の体になるわ。」と言ってのけたり、ドンパチの最中に余裕で入浴してたり・・・ちょいちょい並外れた肝っ玉の強さを見せる女性。

そんなジルを演じてるのは、チュニジア出身のイタリア人女優クラウディア・カルディナーレ。
強い瞳と肉感的な美ボディーが魅力的な人気女優。
当時、フランスのBB(ブリジット・バルドー)、アメリカのMM(マリリン・モンロー)、イタリアのCC(クラウディア・カルディナーレ)として世界中からの人気を集めていました。
ルキノ・ヴィスコンティの『山猫』や、フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』などが代表作ですね。
彼ら2大監督のミューズであり、セルジオ・レオーネ監督とは友人関係にありました。

娼婦のような色っぽさと包み込む母性。
ガンマンにとって”最も心強い2大選手“を内包するジルを演じるなら、こんなにピッタリな女優さんいない!
あるシーンで一瞬だけ見せた”恋する少女”の表情もまたイカしてました♡

ハーモニカ(演:チャールズ・ブロンソン)

ハーモニカは謎の腕利きガンマンで、ジプシー感漂う先住民。
多くを語らない無口な男ですが、クビに掛けたハーモニカでいつも同じメロディーを奏でています。
ミステリアス極まりないww。
しかし、語らずして敵を撃ち、さり気なく女を守るアウトロー感がタマらなくカッコいい!
一貫した人生哲学を持ち、どこまでも硬派に生きる男なのです。

そんなハーモニカを演じてるのはチャールズ・ブロンソン。
日本では「う〜ん、マンダム。」でもお馴染みの大御所俳優。
(私が幼い頃に大流行した男性化粧品CMで、これはチャールズ・ブロンソンのダンディー名ゼリフ。)
代表作も多く、『荒野の七人』とか『大脱走』、『狼よさらば』でも独特なオーラを放ってました。

本作で演じたハーモニカは当たり役過ぎますね。
チャールズ・ブロンソンの旨味うまみがギュッと濃縮されてて色褪せない魅力に溢れてる。
この映画が何度でも飽きずに観れるのはそのせいかも。
目だけのクローズアップ、長~い尺の後ろ姿からも”漢の哀愁”がダダ洩れです。
セルジオ・レオーネ監督が長年切望してきたヒーロー像でもあります。

フランク(演:ヘンリー・フォンダ)

フランクは鬼畜漢の悪党ガンマンです。
マクベイン一家を壊滅させた張本人で、目的達成の為なら女・子供にも容赦しない非情な男。
ビジネス王陰謀の片棒を担ぎ、邪魔となる対象は全て始末してきた。
ちからで全てを支配しようとする古いタイプの男です。
陳腐な方法で冤罪者を作り上げたり、非力な女性を手籠めにするなどして好き放題にやらかしてきました。

そんなフランクを演じてるのは”アメリカの良心“ヘンリー・フォンダ。
“アメリカの良心”と”極悪非道キャラ”のイメージ・ギャップが凄いし、非常に空恐ろしいです…。
彼のトレードマークだったブルー・アイが、ここに来て異常なまでの恐ろしさを放つ。
美しさと怖さって紙一重・・・なんだな。。と痛感させられました。
ヘンリーの憑依がかった演技、恐怖感ハンパない!

でも、ベッドシーンや対決シーンでふと見せた”素”はセクシーでした。
フランクの”心の油断”を表現した一瞬の眼差し、見過ごせないポイントです。

シャイアン(演:ジェイソン・ロバーズ)

シャイアンは盗賊団を率いてるリーダーで、百戦錬磨の凄腕ガンマン。
なんだけど、気は優しくて力持ち…的なムードメーカーでもある。
無意味に人を殺めたりしないジェントルマンで、女性にも紳士に接します。
ちょっぴりマザコン気質ではあるが、茶目っ気たっぷりな愛すべき漢なのです。

シャイアンを演じてるのはジェイソン・ロバーズ。
舞台出身の実力派俳優で、『テキサスの五人の仲間』や『大統領の陰謀』、そして『ジョニーは戦場へ行った』の父親役でもお馴染みの”いい味”俳優。
数多くの映画で独特ムードを放つバイプレーヤーですが、本作でも非常にいい仕事してます。
癒されるんですよね。。ワルだけどあくじゃない感じが滲み出てる。
登場した瞬間から「見方だ。」と確信できるバディーオーラが素敵♡
個人的に一番共感できたキャラクターでした。

特に好きなのは目の表情で、男らしさの中にある”甘えんぼビーム”がタマりません。
貫録たっぷりの可愛さにキュンとするんですよね…。

映画『ウエスタン』見どころ・感想

音でも魅了する!偶発的な音にもこだわりまくる!伝説の12分!

セルジオ・レオーネ監督の作品って、不意打ちで「ドキッ!」とさせられる映像構図だったり音楽の入りがあったりするんだけど、映像・音楽に加えてかなり重要視されてるのが”音の表情”・・・いわゆる効果音。
本作『ウエスタン』でも、オープニングから怒涛の効果音ラッシュです!
黒板チョークの嫌~な擦れ音、小鳥のさえずり、乱暴に閉めるドアの音、3人のガンマンが静まり返った駅で遭遇する<錆びた風車のキシキシ音><ハエの飛ぶ音><ハットに滴る雨漏りの音>…。
そして静寂を突き破る車輪&汽笛の爆音!(ちょっとビックリする。)
ハーモニカ登場シーンまでの12分間、気付けば気になる・・・・・・・・効果音を延々と聴かされますww。
この長すぎるオープニングは賛否両論ありますが、12分間ただそこにある音だけに没頭し、集中力を研ぎ澄まさせる事が狙いなのでしょう。

満を持して迎え撃つは、ハーモニカを奏でるチャールズ・ブロンソンの”超ど級”クローズアップ!
ここに来てやっと”長い12分間”が報われる。何かが始まる予感。。
静寂に浸かり切った体の細胞が喜び始める…。
やはり緊張と緩和って大事。

ちなみに<錆びた風車のキシキシ音>は偶発的なもの。
スタッフが油を差そうとすると「差したら撃ち殺すぞ!」と怒鳴ったらしい(笑)
レオーネにとっては官能的な音だったらしいです。

“ヒロインの心境”が衣裳から駄々洩れ!レオーネ作品初の女性主人公に注目!

本作『ウエスタン』がこれまでのレオーネ作品と大きく違うのは、女性が主人公であるという事。
基本的にはジル目線で物語が進行するカタチになってます。
迫りくる近代社会で生き場を無くすであろう”最後のガンマンたち“の生き様をリスペクトすべく一役買ってるのが女性主人公の存在。
女性の社会進出が世界を変えるかもしれない時代の到来であり、体の強さよりも頭脳(賢い立ち回り)が求められていく時代の到来でもある。

クラウディア・カルディナーレが颯爽さっそうと着こなす衣裳も”ヒロインの心境”と共に変化していきます。
登場~家族の埋葬シーンで、ジルはコルセットでガチガチに固めた黒ドレス・・・・を着ています。
高く盛り固めたアップスタイルの髪に飾り帽子、両手にはボストンバッグ。
真一文字に結んだ唇からは、行先見えぬ恐怖に打ち勝とうとする覚悟が感じられる。
しかし新しい家族を亡くし狼狽した彼女の髪は乱れ、化粧直しの余裕もない。。
首元のレース飾り&袖の装飾はハーモニカに剝ぎ取られ、頭→首→手へかけての武装が消えてしまう。

しかし中盤に差しかかる頃には”全身真っ白”のコルセット・ドレスを着こなしてる。
“どんな色をも受容する強さ”を持ちつつ新たなる闘いに挑んでいこうとする決意・潔さが感じられる装い。
その後この土地の”土色”…つまり根付きを連想させるブラウンのドレスに変わり、”熱いお湯”から出てからの彼女はガチガチに固めてたコルセットからも解放されている…。

装いを辿り、ヒロインの気持ちの変化や成長を深掘りしていくのもまた楽しいんです。
ファッションにも注目してみて下さいね。

小気味いい”バディー劇”にスカッとする!粋な出会いにも痺れが!

それぞれの使命を背負い未亡人ジルの元に集結した2人の漢、ハーモニカとシャイアン。
この2人の出会いのシーンがめちゃめちゃ痺れます。
汚名を着せられ、手錠で”両手の自由”を塞がれた盗賊シャイアンを”ハーモニカの音色”で呼び止めるハーモニカ。
舞台はジルが立ち寄った酒場。
カウンターテーブルの端っこで胡坐あぐらをかくハーモニカ、組んだ足先には一丁の拳銃が。
彼もまたハーモニカを奏でる為”両手の自由”を塞がれてる。
演奏を止めれば目の前の拳銃が拾えるのに、何故かその拳銃を蹴ってシャイアンに取らせようとする。
つながれた両手で銃を受け取ったシャイアンは、今まさに自分を撃とうとしてる雑魚に銃を渡し、手錠の鎖を打ち砕かせる。
決闘の始まり!?と見せかけてシャイアンを助けたハーモニカ。
撃とうと思えば撃てたのに、ハーモニカの真意を秒で察知したシャイアン。
この時すでに2人の漢によるバディー関係が成立してるんです。
粋な出会いに痺れてしまう。

次に2人が再開するのは、ハーモニカが捕らわれの身となった列車の中。
今度はシャイアンが助ける番です。
シャイアンが来るだろうと踏んでたのか、大人しく捕らわれてるハーモニカ。
そして案の定か?列車の裏側に潜み、トイレウォッシュの紐やブーツを使ってコミカル救出劇を繰り広げていくシャイアン。
敵の目を盗んでアイコンタクトし合う2人のコンビネーション、小気味いい”バディー劇”にスカッとし、何度観ても楽しい気分にさせられてしまうんです。

目のクローズアップが強烈!これぞレオーネ映画!

これはレオーネ監督が大好きな演出法なのですが、象徴的なシーンでは「近っ!」とのけ反るくらいの圧で表情が抜かれます。
画面からはみ出るほど近くて一瞬ビックリしてしまうww。

そして、長まわしによる目のクローズアップ。
いい役者だけが耐えうる撮影ロジックですよね。
前作となるドル箱3部作『続・夕陽のガンマン』でのイーライ・ウォラックも素晴らしかった!
本作ではクラウディア・カルディナーレ、チャールズ・ブロンソン、ジェイソン・ロバーズ、ヘンリー・フォンダ…4人共が素晴らしい仕事してる。
じらされても煽られても揺るがない”目の感情”に心震える。

中でもチャールズ・ブロンソンの長まわしクローズアップは圧巻!
もっと長くても見ていられた。
強さ、不器用さ、愁いが入り混じった哀しき漢の瞳。
それらを存分に炙り出すレオーネ・マジック。
こーゆー描写が楽しめるのもレオーネ映画を観る喜びであり、感慨深さなのです。

謎を引っ張るフラッシュバックにゾクゾク鳥肌!

謎だらけの男、ハーモニカ。
正義の基準が見えない正義漢。

壮絶な過去があるんだろうけど、自分の事は喋らない男だし”聞くのは野暮”というもの。
ジルたちも一切詮索しない。

私たちに与えられた唯一の手掛かりは、ぼんやり浮かび上がるフラッシュバック。
離れた所からぼんやり近づいてくる男。
最初のフラッシュバックではシルエットも曖昧で、近づいてくる男の顔すら分からない。
この男が誰なのか・・・何があったのか・・。
その後のフラッシュバックで少しづつ誰であるのか勘付いてくるけど、何があったかまでは分からないし、ハーモニカの”匂わせゼリフ”から少しづつ探りを入れるしかない。
最後の最後まで謎を引っ張ります。

これがいいんです!
感情を探り続けた分、理解できた時の爆発スケールも相当デカい。
ゾクゾクっと鳥肌が立つ瞬間。
エンニオ・モリコーネの音楽も冴えわたり、何度も何度も観てしまう名シーンです。

ジルが入れたコーヒー、シャイアンのカタルシス。忘れられない味&想い。

「コーヒーは?」

このセリフが凄く印象的です。
スイートウォーター・・・・・に嫁いだジルは、商売を辞めて新しい人生をスタートさせました。
汚名を晴らしたいシャイアンが初めてジルの家を訪れた時は(イヤイヤだけど)お湯を沸かしてコーヒーを入れてあげたし、ハーモニカが訪れた時も(イヤイヤだけど)井戸水を汲んであげてた。
水との関連性が高いんです。

ジルのコーヒーを飲んでる時のシャイアンの顔は、どこか子供っぽい。
お母さんが入れてくれてたコーヒーの味と同じらしい。
熱くて、濃くて、うまいやつだ。
忘れられない味ってありますよね?
2度目の「コーヒーは?」の催促に対し、ジルは「入ってるわ♪」と気を利かせている。
自覚のない母性。

この物語の中では、ジル=カタルシスの象徴なんです。
滅びゆくガンマン達の乾いた心を潤し、新時代の男たちにはスイートウォーターを…。
それでいて未来を切り開いていく逞しさも持っている。
・・・余談ですが、冗談ついでにジルのお尻を触ったシャイアンが可愛かったww。
そして、切なかった。
あの時、シャイアンは一言「知らん顔でな。」と言って目くばせするんです。

ちょっと前に”前フリ的”なこと言ってました。
「(働く男たちに)酒を持って行ってやれ。あんたのような美人を見れば元気も出る(俺もな)。見せてやれ。尻を撫でられても知らん顔してろ。ご褒美・・・だ。
これはジルへの助言であり、自身の口説き文句でもあった。
ジルのお尻を触ったのは、きっと頑張った自分へのご褒美であり、あの男たちの喉を潤す時には俺の事も思い出してくれ。。
という切ない想いでもあるんですね。

映画『ウエスタン』エピソード&トリビア

絶対に見たかった!実現できなかったオープニングのサプライズとは?

あの長~いオープニングで3人のガンマンを演じてたゲスト俳優たちは、ウディ・ストロード、ジャック・イーラム、アル・ムロックという大物俳優達でしたが…実は最初の構想では違う3人でした。

最初に想定されていたゲストは、前作『続・夕陽のガンマン』の主要キャストだったクリント・イーストウッド、イーライ・ウォラック、リー・ヴァン・クリーフの3人だったのです!
でも実現しなかった。。
「ドル箱3部作」ですっかりマカロニ・ウエスタンのイメージがついてしまったクリント・イーストウッドが、それを払拭して次へのステップを図る真っ最中だったから。
その後マルチな才能を発揮した事を思えば仕方のないことですが・・・。

こんな嬉しいサプライズ、絶対実現されて欲しかったし、絶対見たかった!!
・・・ですよね?

顔にハチミツ?

因みに、そのオープニングでハエに翻弄されまくってたジャック・イーラム。
あのハエって顔の上ばかり歩き回ってましたが、これって何故かというと・・・。
顔中にハチミツを塗りたくってたからww。

想像しただけでイヤすぎる(笑)
因みに、ウディ・ストロードのハットに溜まっていく雨水ですが・・・。
彼の頭上には水槽が用意されていたそう。
そして信じたくなかったですが…ハットに溜まった水を飲み干すシーン。
・・・あれ、ホントに飲んだらしいです。(うげーーーーー!)
潔癖症の私には耐え難いエピソードです。。

イーライ・ウォラックが繋いだ縁に感謝!

悪人役候補としてレオーネ監督がヘンリー・フォンダに出演依頼した時、返事を渋られたそうです。
自身のウリは「アメリカの良心」ですから。
リスクが大きすぎる!
でも監督は諦めきれずにいました。
そんな時に一肌脱いだのが、前作『続・夕陽のガンマン』で卑劣漢テュコを演じたイーライ・ウォラックでした。
自分の経験談としてレオーネ監督の偉大さを伝え、「出るべきだ。」と背中を押したんだそう。
その甲斐あって”悪人”を演じる決心がついたようです。
イーライ・ウォラックが繋いだ縁に感謝!

因みに次作の『夕陽のギャングたち』に出演したジェームス・コバーンの背中を押したのは、本作出演でレオーネ監督の才能に感銘を受けたヘンリー・フォンダ自身でした。
「最も偉大な監督の一人。」と説得したんだそうです。
何とも熱い男たちです。

クラウディア・カルディナーレの毅然にレオーネ監督もタジタジ!?

そのヘンリー・フォンダ。
最初に撮影したシーンがクラウディア・カルディナーレ演じるジルとのベッドシーンでした。
そしてクラウディア・カルディナーレは現実味を出す為、監督から全裸を要求されてました。
現場にはヘンリーの奥様も・・・。

でも脱がなかった。

「私は自分の肉体に自信があるからといって、それを曝け出すつもりはありません。」とキッパリ断りました。
いつもはフレンドリーでワガママのひとつも言わないクラウディア。
だからこそ、そんな彼女の毅然とした主張はあっさりと受け入れられました。
レオーネ監督もタジタジだったでしょうねww。
そーゆー芯の強さもクラウディアの魅力だと思います。

その後大物になった2人が原案を依頼されていた?

レオーネ監督は、記念すべきアメリカ進出第一弾となる本作の構想を練るにあたり”2人の若き才能”に共同作業を持ち掛けていました。
後にアカデミーを制覇することになるベルナルド・ベルトルッチと、後にイタリアン・ホラーの巨匠となるダリオ・アルジェントです。
ベルナルド・ベルトルッチ、ダリオ・アルジェント、そしてセルジオ・レオーネ。
今となれば豪華すぎる三つ巴…!

なのですが、当時まだベルトルッチ監督にはヒット作が無かったし、ダリオ・アルジェントに至っては映画評論家・・・・・だった。
ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』も、ダリオ・アルジェントの代表作『サスペリア』も産まれていなかった。
なのに「彼らと組むべき。」と信じて疑わなかった。
こーゆーセンスですよね。
キャスティングのセンスにも同じことが言えると思います。

最後に・・・。

映画『ウエスタン』(Once Upon A Time in the West)について、あれこれと書き綴ってきましたが楽しんで頂けましたか?
基本的に「ネタバレ無し」の方針なので、何度も観た方&未視聴の方、どちらも読んで頂けるように仕上げています。
この作品は世界中の映画ファンから愛され続けてるので、これまでもいろんな角度から考察されてきましたが・・・その中のひとつとして、ひっそり残っていけばいいな。。
と願っています。

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