映画『誰もがそれを知っている』スペイン抒情詩的サスペンスに討たれよう!<登場人物相関図つき>感想・キャスト・見どころ!

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映画レビュー

  1. 『誰もがそれを知っている』ってどんな映画?
  2. 『誰もがそれを知っている』あらすじ
  3. <登場人物の相関図>
  4. 『誰もがそれを知っている』<登場人物&キャスト紹介>【スペインの小村で暮らす人々に隠された“それぞれの事情”とは!?】
    1. ラウラ(主人公:帰郷してきた主婦)/ペネロペ・クルス
    2. パコ(主人公:ラウラの幼馴染)/ ハビエル・バルデム
    3. アレハンドロ(ラウラの夫)/ リカルド・ダリン
    4. ベア(パコの妻)/ バルバラ・レニー
    5. アナ(ラウラの妹)/ インマ・クエスタ
    6. マリアナ(ラウラの姉)/ エルビラ・ミンゲス
    7. フェルナンド(マリアナの夫)/ エドゥアルド・フェルナンデス
    8. ロシオ(マリアナの娘)/ サラ・サラモ
    9. アントニオ(ラウラの父)/ ラモン・バレア
    10. イレーネ(ラウラの娘)/ カーラ・カンプラ
    11. フェリペ(イレーネの幼馴染・パコの甥っ子)/ セルヒオ・カステヤノス
  5. 『誰もがそれを知っている』見どころ・感想
    1. ノスタルジックなスペイン美景、程よく酔える世界観。
    2. ハビエル&ペネロペ夫婦の”クセ強”演技対決が見逃せない!
    3. 明るく陽気な「スペイン的親族愛」に潜む闇がリアル!
    4. よそ者を疑う”閉鎖心理”に鋭くメスを入れた演出
    5. 繰り返す”悲恋スパイラル”がシネティック!
    6. 格差が汚した「はした金」の価値。甘く見れば大転落も…。
    7. 誰も得しない”悲壮感”も、水演出でドラマチックに!
  6. まとめ

『誰もがそれを知っている』ってどんな映画?

映画『誰もがそれを知っている』(Todos lo saben)は2018年、スペイン・フランス・イタリア合作のミステリー・サスペンス映画。
監督は『別離』『セールスマン』などの秀逸作品を手掛け、アカデミー外国語映画賞を2度も受賞してるイラン出身の巨匠アスガー・ファルハディ(Asghar Farhādī)。
イラン国外の作品としては第3作目で、1&2作目のフランスに続き今回は初のオール・スペインロケ。
主演はスペインが世界に誇る実力派俳優ハビエル・バルデム&名女優ペネロペ・クルス夫妻で、他にもスペインを代表する演技派の重鎮エドゥアルド・フェルナンデスやアルゼンチンの名優リカルド・ダリンなど…錚々たる重鎮たちが登場します。キャスティング擦るこするだけでもうヤバい!
味わい深すぎるキャスティングに心ザワつきます。

内容としては、ご近所さん皆兄弟で”良いことも悪いこともぜーんぶ筒抜けなスペインの小村を舞台に「みんな仲良しフレンドリー」の裏に隠された<深い怨恨><負の連鎖>が招いた謎の誘拐事件を追う抒情詩的サスペンス。
美しいロケーションはもちろん、細部まで拘り抜かれた映像美、濃厚な人間描写に彩どられた世界観は何ともノスタルジック!
そして、ちょっとしたセリフにまで仕掛けられた伏線・・が巧妙で、観る度に見過ごし点・・・・・が発見できる。
そんな魅力作品なのです。


『誰もがそれを知っている』あらすじ

アルゼンチンからスペインに向け子連れ帰郷中・・・・・・のラウラ。
故郷の村で妹アナの結婚式&お披露目パーティーが行われるので、久しぶりの帰郷です。
村に到着すれば顔見知りばかり。
そこら中から「オラ!⤴」の挨拶が飛んでくる。
親兄弟、姪っ子たち、そして幼馴染のパコとも久々の再会を果たします。
夫のアレハンドロは家に残ってるものの、青春真っ盛りの娘イレーネや幼い息子ディエゴは懐かしメンバーとの再会でウキウキが止まらない。
結婚式&お披露目パーティーも「多少のアクシデントくらいは楽しもう!」くらいの陽気な盛り上がりで、朝までのオール確実!

そんなパーティー中、娘イレーネは悪酔いしたらしく寝室に運ばれて行きます。
しかし、しばらくしてラウラが部屋を訪ねるとイレーネがいない!
探せど探せど見つからない。
そしてラウラの元に一通の”脅迫メール”が!
パーティーは中断され、イレーネ探しに奔走する仲間たち。
イレーネは無事なのか、犯人は誰なのか・・・。
身内犯が疑われる中、村仲間たちの本性が次から次から炙り出されていく…。


<登場人物の相関図>

本作『誰もがそれを知っている』は主要な登場人物が多く、キャラクター達の関係性を把握するのが意外と大変です。
(私もそうでした。)
なので、少しでも手助けになればと<登場人物の相関図>を作ってみました。
もし宜しければ参考程度に見てみてくださいね。


『誰もがそれを知っている』<登場人物&キャスト紹介>【スペインの小村で暮らす人々に隠された“それぞれの事情”とは!?】

ラウラ(主人公:帰郷してきた主婦)/ペネロペ・クルス

ラウラは妹アナの結婚式に出席する為、地元スペインの小村に2人の子連れで帰郷してきた主婦。
オシャレに着飾っての帰郷で勝ち組感を装ってますが、夫ひとり家に残してきた違和感も拭えない…。
かつて幼馴染パコと恋人同士だったことは村中の人が知ってるけど、身分違いだった事もあって皆おくちをチャックしてる。
もちろん、ここを離れて暮らす我が子たちは知る由もない。。
この村の男たちの格差は分かりやすく、大地主だったラウラ家もとある理由・・・・・で今や大貧乏。
村の男と結婚せず裕福に暮らすラウラは、ここの村人たちから見りゃ確かに<勝ち組>なのです。

そんなラウラを演じてるのはペネロペ・クルス(Penélope Cruz)。
今やスペイン女優と言えばこの方!…ってくらい、世界的に大成功した彼女。
エキゾチック小悪魔なイメージ強くて、私も大好きな女優さんのひとり♡
ウディ・アレン監督の『それでも恋するバルセロナ』での”怖カワ”キャラとか最高でした!
綺麗なのに、どっか一癖ひとくせあるカンジ・・・うーん、大好物!

本作でのヒロイン像はありきたりな・・・・・・リア充セレブなんですが、当然その枠をぶっ壊すほどの力量で怪演ブチかましてきます!
さすがペネロペ・クルス!さすがハビエルの妻!
どこか信用しかねる・・・・・・美しきヒロインに、ばっちりとハマってました。



パコ(主人公:ラウラの幼馴染)/ ハビエル・バルデム

パコは子供の頃からこの村で暮らしてきた努力家で、ラウラの幼馴染。
貧しい家系で育ち、大地主だったラウラ一家の使用人の息子でしたが…いつの間にか立場は逆転。
ラウラから”破格の低価格”で買い取った土地でワイナリー経営を始め、今やこの村の成功者です!
才覚・器量ともに最高な妻のサポートもあり、幸せな人生を送っています。
残念なのは、2人の間に子供を授かる気配が全くないこと。
それでも心優しき村のムードメーカーで、人を笑いに巻き込むのが大好きな愛され人あいされびとです。

そんなパコを演じてるのはハビエル・バルデム(Javier Bardem)。
「この人だけは犯人じゃない。」と思わせる朗らかさ、優し気な佇まい、凄くいい!
でも、そーなんだけど…。 
そこはハビエル。
優しさの奥にある”何か”を秘かに見せつけてくる(笑)
そこが彼のズルさ。彼を見る醍醐味。
「もしかすると…!?」が頭をよぎる。。
最後の一滴まで”疑念”を抱き続けられる。
本作でも期待を裏切らず、スクリーン映えオーラ満開でした。

※ハビエル・バルデムの俳優データ(プロフィール&出演作)はこちら



アレハンドロ(ラウラの夫)/ リカルド・ダリン

アレハンドロはラウラの夫ですが、今日は何故か欠席でひとりアルゼンチンでお留守番。
どのみち村の人々からは「裕福な夫でしょ」くらいの薄っすらした印象しか持たれてないからいいのですが。。
しかし、結局は娘イレーネのバッド・ニュースを聞かされ、血相変えて飛んで来ます。
とはいえ、駆けつけたところでやはり影は薄いww。
(・・・あの真実が露になるまでは!)
影薄いわ、秘密ほじくり返されるわ、ケンカ吹っ掛けられるわで…まあ、いいこと無し(笑)
チャッカリ者の妻ラウラとは”対極で暮らす人”って感じです。

そんな哀しき夫アレハンドロを演じてるのはリカルド・ダリン(Ricardo Darín)。
アルゼンチン映画批評家協会が主催するシルバーコンドル賞では最優秀賞を何度も受賞してるし、アルゼンチン版アカデミー賞とも言うべきゴヤ賞でも常連な実力派俳優。
私は『人生スイッチ』に出演してる彼も観たんですが、不条理が許せない”恐いオジサン”を演じる姿がクレイジーすぎて大いに笑わせていただきましたww。
そう!この方顔の圧がんあつが凄いの!一度見たら忘れない!
それなのに存在感うっすい役で登場なんて恐ろし過ぎる
だから余計にミステリーさが増す。
あらぬ疑惑・・・・・が頭をよぎっちゃうんですよね。。

※リカルド・ダリンの俳優データ(プロフィール&出演作)はこちら


ベア(パコの妻)/ バルバラ・レニー

ベアはパコの妻。
先述の通り、パコにはもったいないくらい才覚・器量ともに最高な妻です。
パコに関わる全ての人脈・動向を把握してサポートしてますし、勤め先である更生施設の生徒たちからも相当慕われています。
夫の”元カノ”であるラウラと比較したって、いや…しなくてもかなりの人格者です。
なのに子供は授からないし、パコが自分を本当に愛してるのかにもイマイチ確信持てずに暮らしてる。
何でも手にする・・・・・・・ラウラの存在にストレスすら感じているようです。

そんなベアを演じてるのはバルバラ・レニー(Bárbara Lennie)。
スペイン産ブラック・サスペンス映画『マジカル・ガール』でゴヤ賞 主演女優賞を受賞した逸材です。
フランスの大女優ジュリエット・ビノシュを尊敬してるのも納得の”落ち着き感”があって、か弱く見えつつも芯の強さを感じさせる風情がGOOD!
誰もが認める良妻でありながら分不相応な不幸を背負い、それでも強くあり続けるベアにぴったりなキャスティングだったと思います。



アナ(ラウラの妹)/ インマ・クエスタ

アナはラウラの妹で、この結婚式の花嫁です。
恋人だった村の男と別れ、カタルーニャ人のジョアンと婚約しました。
この結婚式を境にして村を出ていくので、ラウラ同様に勝ち組となるわけです。
夫ジョアンの地元じゃなく、敢えて彼女の地元であるこの小村で式を挙げたのはきっと…村仲間達へのアナなりの勝利宣言だったのかもしれません。(だったら怖いww)

そんなアナを演じてるのはインマ・クエスタ(Inma Cuesta)。
スペインでは数多くの映画・TVドラマで主役を張る人気者で、プライベートに於いても話題に事欠かない女優さんだそう。(私は本作が初見でしたが…。)
劇中の結婚式シーンでは、健康的な肌に真っ白なウエディング・ドレスがよく似合ってました。
アナの存在はストーリー的に”事件の切っ掛け”でしかない感じなので、ちょっぴり影は薄めでしたが・・・。
2021年のNetflix映画『荒れ野』でヒロインを演じてるんだけど、、、私はホラーが怖くて観れないので断念。
『マルティナの住む街』は気になるのでチェックしてみようと思います♪


マリアナ(ラウラの姉)/ エルビラ・ミンゲス

マリアナはラウラの姉で、結婚式の列席者達の宿泊所となったホテルの経営者。
夫フェルナンドは共同経営者で、この村の出身者です。
2年前から始めたホテル業ですが、こんな田舎村では儲けに波があり生活はカツカツ。
陰ながら、ご近所さん達から「負け組」のレッテルを貼られてしまってる状態です。
負け組にしか分からない苦悩は胸の奥にしまい、懐深い笑顔を武器に我が人生を謳歌しています。

そんなマリアナを演じてるのはエルビラ・ミンゲス(Elvira Mínguez)。
スペインでは名バイプレーヤーとして有名で、助演賞ノミネートされることが多い女優さん。
2015年の映画『しあわせな人生の選択』ではリカルド・ダリンと共演してますね。
本作では「勝ち組」となった妹2人を笑顔で送り出すしかない長女マリアナの複雑な心境、そして我が娘の不憫な境遇に心痛める母の感情を見事に演じあげていました。
ラストを飾るいぶし銀の表情には、思わず「流石だなぁ~。」とため息出ちゃいました。



フェルナンド(マリアナの夫)/ エドゥアルド・フェルナンデス

フェルナンドはマリアナの夫。
先述の通り、妻マリアナと一緒に2年前からホテルを経営しています。
パコとは古くからの友人であり、良きライバル。
でもパコはワイナリー経営が大成功してるので、圧倒的に負け戦を強いられてる状況。
子供無しのパコとは違って美しい愛娘がいますが、自分に稼ぎが無いせいで苦労掛けちゃってる。
冗談めかした体で”自虐ネタ”を披露するも、笑うに躊躇される始末なのです。。

そんなフェルナンドを演じてるのはエドゥアルド・フェルナンデス(Eduard Fernández)。
スペイン映画好きならお馴染み、いい味演技派俳優のボス的存在!
ガウディ賞やゴヤ賞、サン・セバスティアン国際映画祭などの賞レースで数々の称賛を受けている実力派です。
2010年の名作『BIUTIFUL ビューティフル』では主演ハビエル・バルデムの兄役で登場してました。
宿敵であり旧友でもあるパコとの微妙な距離感、いい人なのか策士なのか測りかねる曖昧な様相をひょうひょうと・・・・・・・演じてるとこが大物ならでは。
余裕の貫録を見せつけられた気がしました。



ロシオ(マリアナの娘)/ サラ・サラモ

ロシオはマリアナ&フェルナンドの一人娘。
母マリアナと同様、この村の男(ガブリエル)と結婚し女児を授かっています。
美しいけれど夫・両親共に下層民で、思いっきり負の連鎖を喰らってる状態。
就職先にも恵まれずに両親が営むホテルでの下働きを余儀なくされてるし、愛する夫は職探しでよその国・・・・に飛んじゃってる…らしい。
同じ年頃とは言え、甘やかされて育ったワガママ娘イレーネ(ラウラの娘)とは真反対の人生。
母マリアナ同様、彼女自身も「負け組」の人生を歩んでしまったようです。

そんなロシオを演じてるのはサラ・サラモ(Sara Sálamo)。
レアル・マドリードの人気サッカー選手イスコのパートナーとしても有名で、2児の母。
(私はあんまりサッカー詳しくないけど、日本でも人気あるのかな?)
見た感じ通りのパッショネイトな性格だそうで、SNSは連日炎上しっぱなしらしいww。
ロシオのしたたかなる母親像、秘めたる野心を演じるにはドンピシャなキャスティング。
力強い眼差しがエキゾチックで素敵♡ 同じ女性ながら”ゾクッ”としちゃう美しさでした。



アントニオ(ラウラの父)/ ラモン・バレア

アントニオはラウラの父。
もともと大地主だったこの一家を、賭け事&らぬ意地のせいで「負け組一家」に陥れてしまった張本人です。
一家を破滅させたくせにプライドだけは誰よりも高い…そんなやらかし系・・・・・お父さん。
自分のせいで手放さざるを得なかった土地なのに、そこでワイナリー経営して財を成したパコに対し、憎悪の気持ち(逆ギレ)を募らせながら暮らしてます。

そんなアントニオを演じてるのはラモン・バレア(Ramon Barea)。
100以上もの映画・TVドラマシリーズに出演し、自ら監督・脚本を務めた作品も多数。
自身が設立した劇場Cómicasdela legua・Karrakaでの脚本や舞台演出も多数手がける功労人であり、国立劇場賞にも輝いたスペイン演劇界の重鎮です。
そんな彼が、本作では絵に描いたようなダメ男を演じている。
怒りを貯めこんでね続けてる前半から、たまりかねてみにくき修羅場を晒してしまうまでのジワジワ感が絶妙にイラっとする!(笑)
クセモノ感、半端無かったです!



イレーネ(ラウラの娘)/ カーラ・カンプラ

イレーネはラウラの娘で、披露パーティーの最中に謎の失踪を遂げます。
美しく冒険心旺盛なアクティブ女子ですが、甘やかされて育ったせいでワガママ気ままなのが玉に瑕たまにきず
(悪気はない。)
パコの甥っ子フェリペとは幼馴染で、この再会を機に恋仲へ発展します♡

イレーネを演じてるのはカーラ・カンプラ(Carla Campra)。
重鎮やビッグネーム揃い踏みの中、俄然際立っちゃう初々しさ♡
子役スターから青春スターへと順調にキャリアを積み、多くのTVシリーズで主演を務める人気者。
スペイン版ブレイク・ライブリーって感じで、すっごく笑顔がキュートです。
無邪気すぎる恋を演じるにぴったりな女優さんでしたね。



フェリペ(イレーネの幼馴染・パコの甥っ子)/ セルヒオ・カステヤノス

フェリペはパコの甥っ子です。
甥っ子と言っても、成長した現在の顔をパコが認識できないくらいのご無沙汰関係ですが。
(妻ベアは当然ながらよく把握してる。素晴らしい。)
イレーネとは幼馴染で、おそらく彼女にはずっ~と淡い恋心を抱いてた感じなんだけど…この再会でやっと恋仲に♡
昔のパコと同じく誇り高き下層民なので、イレーネとの家系格差が悩みどころです。。

フェリペを演じてるのはセルヒオ・カステヤノス(Sergio Castellanos)。
『1000の顔を持つスパイ』(フェルナンド役のエドゥアルドが主演男優賞を受賞した作品)の監督、アルベルト・ロドリゲスが手掛けた人気TVシリーズ「La peste」(2018年)で一躍人気者となった要注目・・・ネクスト・ブレイク俳優!
イレーネ役のカーラとは1歳違いだそう。
ちょっぴりナイーブな愁いがあって、許されざる初恋感をグッと盛り上げてくれました。



『誰もがそれを知っている』見どころ・感想

ノスタルジックなスペイン美景、程よく酔える世界観。

本作『誰もがそれを知っている』は、全てのシーンをスペインで撮影しています。
ロケ地となったのはマドリッド郊外のトレラグーナ。
歴史・芸術的建築群に指定された美しい街で、映画『誇りと情熱』(ケイリー・グラント&ソフィア・ローレン主演)の撮影場所としても知られています。

作品を観ていて何となくノスタルジックな気分になっちゃうのは、俳優陣の抒情演技もさることながら、歴史が刻まれたこの美しい風景も一役買っていると思います。

また、マドリッドでは大都市から僅か数キロの距離に優秀なワイナリーが点在してるらしく、パコが経営してるワイナリー風景にもすっごく癒される。
ブドウ園って色合いが優しいし、何となく心安らぐ。(働いてる人は必至だけども。)
空想に身を委ね、一日中でも眺めていられそう。。
芳醇なワインの如く、程よく美景に酔えるのも本作の魅力なのです♡



ハビエル&ペネロペ夫婦の”クセ強”演技対決が見逃せない!


スペイン映画好きならずとも、ハビエル・バルデム&ペネロペ・クルスを知らない映画ファンはいないでしょう。
ずーっとおしどり夫婦でい続けられるのが不思議に思えるくらい、2人とも個性の塊なんですよね。
そんな彼らの演技対決が久々に楽しめるのも、本作『誰もがそれを知っている』の魅力です。
ハビエルはキャラクターの中にひと癖絡ませる達人ですが、ペネロペだって美しいだけじゃない、彼に負けないくらいのクセモノ女優です。(いい意味で。)
シレっと豹変するのが上手い。
本作は、アスガー・ファルハディ監督が2人の個性を思い描いたうえで・・・・・・・・脚本を起こしてることもあり、思う存分2人を戦わせてますww。
ペネロペの豹変演技、ハビエルの謎めきオーラ満開の演技が同時に楽しめる♡

スペイン旅情と共に、湿り気たっぷりの名演技が堪能できます。
ジワジワ迫りくるクセ強演技対決、ぜひとも見逃さないでくださいね。



明るく陽気な「スペイン的親族愛」に潜む闇がリアル!


スペイン人って気さくで陽気な人たちってイメージありますよね。
でも実際は、住む地方によって全然性格とか違うらしい。
本作で登場する村の人々にもよその人間に対してどっか閉鎖的な態度が見え隠れしてる。
その分仲間意識が高いし、親族なら尚更で…。
情熱的な家族・親族の再会、唄い踊るパーティーのシーンとかすっごく楽しそうで、
「この中に入りたい♪」って思う程のご陽気さです。
でも、ジワジワと裏の気持ち・・・・・が溢れだしてくる。

近しい親族だからこ湧いてくる激しい嫉妬、妬み、劣等感・・・それだけでも息苦しいのに、「村の団結力」という名の浅はかな噂話が追い打ちをかけてくるんです。
もう誰を信じたらいいのかすら分からなくなってくる。

国柄なんて関係ない。どこに住んでたって潜む闇は同じなんですね。
とてもリアルな演出だなぁと感じました。



よそ者を疑う”閉鎖心理”に鋭くメスを入れた演出


仲間意識が高い程<よそ者=悪者>になりがちですよね。
小さなグループ同士の対決から組織、国同士に至るまで大小関係なく存在する身内びいき・・・・・の意識。
この物語の軸となるラウラ一家にとっては地方出身の親族身分違いのご近所さんも、どちらも一線を置くべきよそ者。
パコやアレハンドロ、アナの夫となるジョアンだってそうです。
あの歓迎ムードは作りものでしかない。

婚礼で仲間が大集合してるのに、一大事(失踪事件)で協力を求めるべき人物が分からない。
イレーネ救出のタイムリミットも迫ってるのに、ただただ大パニックです。
犯人は身内かもしれないし、よそ者かもしれない・・・。
<だったら身内だけが助かればいい…!>とばかりに躍起になっていく。
一家の醜い本性がどんどん露になっていく。
そして巻き込まれていく仲間達…。

誰しもが少なからず持ってる閉鎖心理に鋭くメスを入れたアスガー・ファルハディ監督。
ジリジリと効かせてくる演出がやっぱりリアルです。。



繰り返す”悲恋スパイラル”がシネティック!


この物語には、大枠2種類の悲恋スパイラルが存在しています。
「勝ち組の悲恋」と「負け組の悲恋」です。
そしてその悲恋は娘の代にまで引き継がれてる。
何故か避けることの出来ない負のスパイラル。

上昇志向が高いラウラは村以外の男と結婚して成功イメージや安定を手に入れたけど、一生忘れる事の無い尊い純愛を失った。
せめて娘イレーネには本当に好きな人と幸せになってもらいたいけど、親の心子知らずで…。
よりによってたまにしか戻らない・・・・・・・・・我が故郷で”身分違いの幼馴染フェリペと恋仲に。
負の連鎖断ち切れずか・・・。
尊い純愛が成就するかどうかは…状況から見れば全く期待が持てません。
妹アンもラウラ寄りの性格で、この結婚を機に成功イメージや安定を手に入れようとしている。
元カレだった男性はこの村の人だったようだし、彼女も愛より現実を選んだんだろうと推測できます。
そして多分、自分を騙しだまし生きていく。

いっぽう村に残り、苦労を覚悟のうえで愛する人を選んだ姉マリアナ。
愛はあれども思った通りのカツカツ生活だし、陰では負け組呼ばわりされ、年頃の娘にまで生活苦バトン・・・・・・を渡さざるを得ない状況。。
そして幼子を抱える娘もまた自分と同じように同郷の愛する人を選び、苦労と共に生きている。
繰り返す悲恋スパイラル。

でもこの悲恋スパイラルこそがシネティックでもあるし、生々しい人間ドラマを産み、推理欲を掻き立てていく基となるのですね。



格差が汚した「はした金」の価値。甘く見れば大転落も…。


今でこそパコは成功者ですが、彼が財を成したワイナリーは元々ラウラ家の土地でした。
パコはラウラ家の主アントニオの使用人の息子だった。
そしてアントニオは、今でもパコを下に見ている。…いや、下に見たい気持ちでいる。

そもそも道楽に持ち金をつぎ込んで破産した自分が悪いのに、土地を買い取ったパコを悪者にしてる。
なるべく疎遠に暮らし、結婚式で顔を合わせても距離を取ってポーカーフェイスを務めましたが…。
孫の失踪で大金を要したせいで自制心が崩壊してしまった。
「(あの土地は)私の土地だったのに、お前はラウラを騙して無理に売らせ、はした金で手に入れた!」と罵ってしまう。
母は母で「あなたの言い値でね。」と付け足す始末。

でも、そこで仲裁に入ったラウラの一言で撃沈します。
「私は騙されてない!当時私と夫はお金が必要だった。だからパコが払える金額・・・・・・・・で売ることにしたの。」
パコだって当時貧しかったのに、ラウラを助けたい一心でなけなしのお金を手渡してた。
そしてパコの努力でワイナリーは見違えるように成長した。

アントニオにとってのはした金・・・・は、パコにとってなけなしのお金・・・・・・・だった。
お金の価値を甘く見ていたアントニオが大転落しただけ。
ただただ脱力し、あきれ顔のパコはその場を去っていきます。
“人としての価値”と共に格差が逆転してしまった事実。
改めて”一家の恥”を認識させられ、愕然とするラウラ一家なのでした。。



誰も得しない”悲壮感”も、水演出でドラマチックに!


本作の劇中では、水のモチーフが効果的に使われています。
それは一生懸命働いた後に浴びるパコのシャワーだったり、イレーネの失踪事件をより重くする大雨だったり、班員アジトを囲むくらい沼、街洗浄のホースから噴射する大量の水しぶきだったりと結構多い。
巧みな水演出により、象徴シーンをよりリアルに臨場化させているんです。
誰も得しない”悲壮感”も水演出でドラマチックな振り付けに♡
すごく絵画チックだし、芸術的にも高得点です!



まとめ


今回は、スペイン・フランス・イタリア合作のミステリー・サスペンス映画『誰もがそれを知っている』についてあれこれ語ってみました。
楽しんで頂けましたか?
大好きなハビエル・バルデムがいい味出してたし、ミステリーのジワジワ感、芸術点共に最高に素敵な作品でした。


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